03 光の粒 〜野川かさね エッセイ〜
公開日test:20190211作成日test:20201128
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よく晴れた日。 降るはずもない雪が、 木についていたのか、 遠くの山に積もっていたのか、 風に吹かれて木々のあいだを光を浴びながら落ちてくる。 風をうけているのだから、 実際にはそれなりの速さで落ちているはずなのだけれども、 なぜだか雪の粒、ひとつひとつが見えるようだ。 そして、その光を受けた雪の粒を見ている時間のあいだ、 私はまわりの音を失っている。 無音。 まるで水のなかにいるようだ、と思った。 音は遠くなり、目に映るまわりの景色は速度を失う。 降ってくる雪の粒は水中の泡のようだった。 雪は天から地へと、泡は天をめざしてのぼっていく。 自分のいま立つこの場所は 誰にも知られていない深海の世界かもしれない。 そんな錯覚をおぼえた。 そして、自分の体は森のなかに沈みこんでいく。 投稿...