駿河湾を見晴らすトレイルで、潮風とシェリーを味わう|山とお酒のエトセトラ#04
公開日test:20180523作成日test:20201128
new表示test:
低山も3000mを越える南北アルプスも、もちろん海外のトレイルだって、季節に合わせたお酒を携えて臨めば山行はもっと楽しくなる。テント泊に小屋泊り、山で過ごす一日をとっておきのものにしてくれるお酒のおはなし。 サクラやマテバシイなど広葉樹の雑木林を縫うようにつけられた“YAMABUSHI TRAIL ” マウンテンバイカーからアツい注目を集める、西伊豆・松崎町の“YAMABUSHI TRAIL ”。江戸時代末期からこの界隈で盛んだった炭焼きのための作業道、および庶民の生活道として使われていた古道を、マウンテンバイクのフィールドとして再生させたトレイルである。元々は平安時代に拓かれた生活道であり、周辺には宝蔵院という、弘法大師が開いた霊場もあることから、山伏たちの修験の道としても使われていたようだ。江戸時代には7本の街道と、街道と集落をつなぐ細かな生活道が張り巡らされ、山に設けられた炭焼き窯で焼いた炭を里に下ろすのに使われていたとか。 “YAMABUSHI TRAIL TOUR”を主宰する松本潤一郎さん かつて賑わった生活道も、終戦後のインフラの整備や炭焼きの衰退とともにすっかり廃れてしまった。倒木や土砂、落ち葉に埋もれて廃道となっていた古道の整備をたった一人で企画し、実現させてしまったのが松本潤一郎さんだ。 そもそもこの松本さんが無類の道好き・歩き旅好き。中学生の時に自宅のある横浜から紀伊半島へ、ヒッチハイクの一人旅を始めたことを皮切りに、17歳でアンナプルナ・サーキットを目指し、一路ネパールへ。以降もインド、中国、パキスタン、アフガニスタンを旅し、ヒマラヤ山脈やカラコルム山脈のトレイルをひとり、歩いて巡った。 江戸時代、あるいは明治時代の年号を刻んだ石碑が 松本さんが道に魅せられたのは、それが人や物資を運ぶための手段というだけではなく、人々の生活を支え、人と人との交流を促し、文化や歴史を運ぶものでもあったから。道を歩けば、そこに息づいた歴史や物語を知ることができる。西伊豆の古道には、海外のトレイルにも負けないくらいの魅力的な風景と半世紀も前に途絶えてしまった人々の生活の痕跡があった。それを掘り起こすことにロマンを感じたのだという。 マウンテンバイクもトレイル歩きも、どちらも楽しめる チェーンソーと鍬を使い、手探りで整備した古道は現在、7ルート・40kmにも及ぶ。今年からは念願だったハイキング・ツアーもスタート。マウンテンバイカーだけでなくハイカーも楽しめるようになったというので、早速案内してもらった。 まずは海岸からすぐにアクセスできる標高550mの富貴野山へ至るトレイルへ。漁港の近くで名物のさつま揚げをトレイルのおやつに購入する。 西伊豆の山歩きの魅力は、何と言っても海と山の近さにある。低山ながら眺望のいいポイントでは、駿河湾の向こう側に日本平も、時に南アルプスまで眺めることができるのだ。 弘法大使が創建したという宝蔵院。苔むした参道には180体もの石仏が 広葉樹の雑木林の中につけられたトレイル沿いに、炭焼き窯の跡や整備の途中に松本さんが掘り出したという馬頭観音、江戸時代の年号を記した石碑や地蔵を見つける。整備時には江戸時代の通貨もいくつも掘り出したとか。人の行き来の激しかった往時を偲ばせるエピソードだ。...