「眺める山から、登る山へ」愛され山をみんなで作る、チーム下呂富士代表・松野泰啓さん
公開日test:20180517作成日test:20201128
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ひとたび人の手が入った山は、そのあとも人がケアし続けなければ荒れ果ててしまう。山は人の範疇を超えた偉大な存在であるのと同時に、ずっと昔から人と共にしてきた存在でもあります。 今回お話をうかがった、チーム下呂富士代表の松野泰啓さんは、一枚の絵を見せてくれました。 70歳を過ぎる松野さんの伯母さんにもらったという、何十年も前の下呂富士と麓の街並みを描いたもの。 「こんな景色を取り戻せたら」 松野さんの情熱は、チーム下呂富士として今では多くの仲間を集め、下呂を盛り上げています。 ハイキング以上、登山未満 右手が下呂富士(松野さん提供) 標高1,500メートル級の山に囲まれ、その山頂からは御嶽山の絶景を拝むことができる、登山と温泉の名所、岐阜県下呂市。そのなかで、その輪郭から通称「下呂富士」と呼ばれる中根山の標高は767メートルと低く、かつて林業の山として人々に活用されていました。 しかし、やがて林業も廃れ、徐々に人が入らなくなった下呂富士は、荒れた山へと変わっていきます。 「下呂富士には登りたいとはずっと前から思っていたんですが、“地域げんき未来塾”で登山道整備をするまでは、登ったことがありませんでした。登ってみたら驚くほど倒木ばかりで……これはどうにかしないとって思ったんです」 松野さんは、下呂市出身。大学から名古屋へ行き、仕事で東京でも勤めたのち下呂にUターン。福祉の仕事をしながら受講した地域げんき未来塾の最後のテーマに、下呂富士の登山道整備と登山会開催をリーダーとして掲げました。 「下呂富士はもともと”登山をする山”という概念がなかったんだと思います。どちらかというと眺める山。林業が盛んになる前は広葉樹にあふれ、紅葉や桜もきれいだったそうなんですが。けど、ぼくはこの下呂富士にすごく可能性を感じていて」 「下呂市周辺は標高が高くて眺望も素晴らしい山がたくさんあるんです。ただ、登山をやらない人がいきなり登れるかっていうと道具も持っていないし腰が引けるだろうなと。そういう人でも気軽に登れ、観光客も楽しめる。スニーカーでも大丈夫なハイキング以上<登山未満のいい山はないかという考えでいたところ、下呂富士がぴったりだって感じたんです」 「チーム下呂富士」の歩み チーム下呂富士の活動(松野さん提供) 松野さんの想いは、塾生や地元の仲間、市外・県外の方からも共感を得て、多くのひとを巻き込んでいきます。地域げんき未来塾が終わった後も、この取り組みは継続すべきだと「チーム下呂富士」を結成。その活動はこれまでに合計5回の登山会、小学生を対象にした登山への協力が1回。普段の登山道整備と継続して行われています。 「登山口の近くまでは車で上がらないといけないんですが、登山客用の駐車場がなくて。当たり前ですよね、それまであまり登る山としては考えられていなかったので。だから、近くにあるお寺の住職さんにお願いして、そこの駐車場を登山客も使用できるようにしてもらったんです。住職さんも快く受け入れてくれました。今では、登山前のお参りをここでして、登山口に向かうというひとつのコースになっています」 さらに登山口の手前には、歴史ある温泉旅館「湯之島館」の敷地を通ることになるのですが、ここの通行も下呂富士登山客については許可をもらったのだそう。 企画や広報、交渉、事務的な立ち回りが多い松野さん。チーム下呂富士にはそんな松野さんと下呂富士を支える仲間がたくさんいます。 「副代表の矢嶋さんは塾で出会ったんですが、僕とは真逆の人で。趣味が草刈りで、とにかく体を動かしていないと嫌だっていう人間なんです。細かい登山道の看板や焼き印も全部自分で作ってくれましたし、ガイドブックも彼の手作りです」...