感謝と希望を料理に込めて。北八ヶ岳『白駒荘』山小屋再建の物語
公開日test:20191202作成日test:20191202
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北八ヶ岳の白駒池湖畔にあり、多くの登山客・観光客に親しまれている山小屋・白駒荘。2017年の年末に大きな火災事故に遭いながらも、翌年の秋には営業を再開。白駒荘のご主人が再出発にかけた想いを取材しました。 火事で焼失してしまった建物を9ヶ月で再建し、10ヶ月後には営業を再開した山小屋があります。不慮の事故を乗り越え、誰もが驚く速さで小屋を建て直したその人は、一体どんな人なのでしょう。北八ヶ岳・白駒池の湖畔に建つ白駒荘を訪ねました。 4代続く老舗山小屋の試練 八ヶ岳中信高原国定公園内にある白駒荘は今年で創業97年。茅野市で温泉旅館を営んでいた辰野茂氏が峠を越えて現れ出た湖の美しさに一目惚れし、ここに山小屋を建てたいと、国から水利権を獲得したのが始まりです。 創業当時の白駒荘 現小屋主の辰野廣茂さんは4代目。2015年に先代が不慮の事故で急逝したのを受け、後を継ぎました。そして、先代が30年前に建てた新館の改築を行った2017年の年の暮れ、無人だった山小屋で火災が発生。新館と浴室棟の2棟を全焼するという災難に見舞われました。 白駒荘小屋主 辰野廣茂さん 事故の処理が終わり、再建をしなければと思ったものの、国定公園内の建築申請には許可までの煩雑な手続きがある上に、工期や費用など多くの問題が立ちはだかりました。何度もめげそうになったという辰野さんを救ったのは、お客さんからの励ましの声でした。 奇跡的に類焼を免れた本館は創業当時の面影を残している 八ヶ岳の山小屋らしさが漂う本館の廊下 「60年前に来たとか、30年前とか、本当に大勢の方に、“思い出がある場所なので、ぜひとも再建をしてほしい、応援してますから”ということで温かいメッセージをたくさんいただきました。やっぱり致命的ではない、自分の命を持っていかれた訳ではない、体を生かしてもらったという事は、そこから頑張れよ、っていうことだと思ってやって来れました。」 大勢の人の支援に後押しされ、再建のために奔走した辰野さん。国定公園内の建築物としては驚異的な早さで許可申請が整い、再建工事が始まりました。マイナス20度の厳冬期に行われた焼け跡の撤去作業は、長年付き合いのある大工さんでも音を上げるほどの厳しさ。けれど、前の建物の基礎がしっかりと残っていたことが工期の短縮に繋がり、白駒荘は火災から9ヶ月後の2018年10月にリニューアルオープンに至りました。 急ピッチで進んだ再建工事。写真を撮る余裕もない中、常連客のお子さんが記録を残してくれたそう。 「人のご縁があり、許可も一早くおりたのは、先代、先々代が積み上げて来たものがあったおかげです。一番大事な財産は、建物とかそういうものではなくて、人の想い。97年の歴史があって、これだけの人に囲まれていたんだなと改めて感じたということが一番大きかったと思います。」 食堂のテーブルには、先代が廣茂さんの生誕記念に植樹したポプラが使われている 感謝の心を料理に込めて こうして再建から2年目の冬を迎える白駒荘。お客さんに恩返しをしたいと、辰野さんが特に力を入れているのは、料理です。 白駒荘の料理の主役は、自家栽培の野菜。先祖代々、茅野市にある自家菜園で野菜作りを行っています。 食堂の人気メニュー、贅沢野菜のカレーライス...