23 いつもの道で 〜野川かさね エッセイ〜
公開日test:20191223作成日test:20201128
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いつもの道を歩く。 昼前だというのに陽はかなり傾いている。 立ち止まって息を吐くと白い煙になって空中に消えた。 「歩くことが好きだ」頭のなかにそんな言葉が浮かぶ。 その言葉は声となって、森の静けさのなかに響いたような気がして すこし照れくさくなった。 歩くことが好きなのは小さい頃からで、散歩好きの両親の影響かもしれない。 写真を撮ることを目的に山を登りはじめたとき、 「歩いては撮る」という行為やそのペースになぜか心地よさを覚えたのは 子どもの頃のリズムと一緒だったからなのか。 ぶらぶらと歩いて、立ち止まり、撮影をして、 また歩く。そんなことを繰り返しているうちに 頂上にたどりつく。そして、また歩きだす。 登山中、目に止まり記憶に残る景色は決して派手なものではなく、 言葉に表すと、とてもささやかな瞬間だ。 そして、そんな瞬間は山だけではなく、街にもあふれていて いつも目の前の風景は私の心を山と街の両方へと向かわせる。 街で山を、山で街を。 そんな風に心を漂わせながら 今日もいつもの道をのんびりと歩く。...