憧れを現実に。普通の会社員だったカヌーイストが「至上の暮らし」を手にするまで。
公開日test:20190225作成日test:20190301
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望んでいたのは、毎日の「ワクワク」感 鳥たちの声で目覚め、透き通った空気を気持ちよく吸い込む。 日々、変化する季節を五感で確かめながら、工房へ向かう朝。 頭の中は、今、作ろうとしている木工家具のアイデアで一杯だ。 東京の西のはて、奥多摩で「家具屋 椿堂」を営む羽尾芳郎さんの一日は、こうして始まる。 「この工房にいると自分に正直でいられるんです。そんな毎日に満足しているし、楽しんでいる僕の背中を幼い娘たちも間近で見ていてくれている。今のスタイルは教育にもいいのかなって思いますね。現実問題では、注文が大量に来ても一人ですぐにやりきれないし、かといって作り置きしていたものがどんどん売れていくなんてこともありません。だから正直、ビジネスとしてはなにかと難しい部分もある。でも、とびきり美しい材を見つけた時や、地道に削り出していった材が形を表す時は、なにより楽しい。つくづく好きなことやっているんだなと毎日、実感していますよ」 羽尾芳郎。1978年神奈川県生まれ。2007年より『家具屋 椿堂』として家具製作をスタート。 オフには長年、趣味として付き合ってきたカヌーを漕ぐ日も多い。 ちょっとした急流から、静かな水面の湖まで。 カヌーを漕ぎ出せる水辺は車で15分も走ればいくつもあり、コース選びには事欠かない。 場合によっては木工の手を休め、近くの川でひと漕ぎしてからまた仕事に戻るなんてことも可能だ。 自然豊かな土地では、日常の喜びも充実している。 寒い冬の間、ほんの少し日が長くなれば、春の訪れを実感して、気持ちが上がる。 庭にタラの芽を見つけたら、お昼には天ぷらにして食べ、この上ない幸せを感じる。 身の回りにある自然の、ほんのわずかな変化が、とても興味深く、面白く、愛おしい対象なのだ。 工房は、こだわり抜かれた建築。隣には妻と3人の娘と暮らす自宅がある。 100%の情熱で打ち込める仕事と、美しい自然に囲まれた心豊かな生活。 人が羨むようなこの暮らしこそ、20年ほど前、羽尾さん自身が夢に描いたライフスタイルそのものなのだという。 将来を決定づけた、自分の中の「違和感」...