ひとりのために、丹精を込めてひとつの製品をつくり上げる。アトリエブルーボトルがめざす、モノづくりとは―。
公開日test:20201030作成日test:20201129
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東京都杉並区の閑静な住宅街に、そのアトリエはあった。 トビラには「アトリエブルーボトル」の文字。 2013年、辻岡慶さんが奥さまの里奈さんと立ち上げたアトリエブルーボトルは、企画、デザイン、縫製、製品テスト、ユーザーへの発送業務、すべての作業をふたりが分担して行っている。 軽量で使い勝手のいいバックパックをはじめとし、そのバックパックとデザインを統一させたサコッシュ、ウォレット、それにヤクウールの靴下。 自分たちが“本当に使いたいと思うもの”、“デザイン性と高機能性が両立しているもの”をモットーに、自らデザイン・縫製を行い展開しているブランドだ。 今年4月に完成したばかりというアトリエは設計から携わり、ふたりのこだわりが詰まる 凝ったデザインを具現化するのはとても難しい。でも、僕はそれを実現したい アトリエブルーボトル主宰の辻岡慶さん ――おふたりは元々、かばんデザイナーとして活躍されていたと聞きました。 辻岡:はい。僕は婦人用かばんのデザイナーとして、彼女は紳士用かばんをメインに活動していました。ファッション業界のかばんというのは、循環がとても早いんです。毎年新しいデザインを生み出してはサンプルを作って展示会をし、製品化する。世の中で売れるものを作っていかなくてはならない。だから、同じデザインのかばんというのは、1年で消えていってしまうんです。そういったサイクルの早い仕事をしていく中で、「長く愛用してもらえるかばんを作りたい」という思いが自分の中で芽生えていきました。 左が自分用に作ったモデルで、右が現在製品化している「PAC-03」。デザインと素材の仕様変更は多少あるが、当初から完成度の高いデザインということが見て取れる それで4年前の2012年、仕事の合間を縫って、コツコツと自分の登山用バックパックを作ってみたんです。もともと僕たちは山登りが好きだったんですが、自分が欲しいなと思うバックパックになかなか出会えなくて。 で、そのときに作ったモデルが「アトリエブルーボトル」立ち上げのキッカケになりました。 ――辻岡さんには縫製の技術も? 辻岡:デザイン専門の学校に通っていたときに授業で縫製もやっていたので、ふたりともある程度の知識はありましたね。でも、デザイナー時代は革をメインに扱っていたので、今製品に使っているようなナイロン生地に関してはまったく知識がなくて。そこは独学で学びつつ、立体的に加工していった感じです。 製品のメインマテリアルとなるX-PACなどは、アメリカから独自で輸入している ――デザインするにあたり、こだわっている点・苦労した点はありますか? 辻岡:「デザイン性」と「使いやすさ」の両立はマストだと思っているので、それを追求しました。 でも、その両面をデザインに落とし込むのってとても大変で……。カッコいいけど、いざ使ってみると使いにくい。今まではつくりやすさを優先してファッションかばんをデザインすることも多かったので、僕たちアトリエブルーボトルの製品は、使いやすさを極めつつ、高いデザイン性を維持することをモットーとしています。 登山歴12年の辻岡さん自らがテスターとなり、積極的に山で使い勝手を検証する。実際に歩いているときや下山後に「こういうのがあったらいいなぁ」とアイデアが浮かぶのだとか。写真=辻岡さん提供...